【パテラ】だろうが【ヘルニア】だろうが目指すのは健康です!

手力整体塾@からだ応援団のパンチ伊藤です。犬の整体師養成講座へお越しになる人達がやたらと“パテラ”という言葉を口にするので、当たり前を大切にする塾長のワタクシがナナメな目線でツッコミを入れてみます。この講座では監査役として関わっているのであまり口を出さないようにしていますけれど、たまにどうしても口を挟みたくなることがあります。
正しい知識は正しい言葉から!パテラ=膝蓋骨、ヘルニア=突出

パテラとかヘルニアとか・・・自ら難しくしないように
知識をつけると使いたくなる気持ちもわかります。勉強したことを活かしたいのは当然です。だけれど・・・
ヘルニア
ヘルニア=突出。頸椎椎間板が押しつぶされて突出すれば頚椎椎間板ヘルニア、腰椎なら腰椎椎間板ヘルニア。人間の場合他に鼠径部から腸が出てくる鼠径ヘルニアなどがあります。犬のヘルニアといえば腰椎椎間板ヘルニアがほとんどだと思います。
椎体の間でクッションの役割をしているのが椎間板。線維輪で囲われた中にほぼ水分のゼリーの様な髄核があります。差し詰めちょっと固めのウォーターベッドみたいなものです。
可動を越えた動きや偏った反復動作で線維輪が裂けたり、許容を超えたチカラが椎間板に加わった場合、線維輪を突き破って髄核が飛び出します。これが神経を圧迫してウンヌンというのが昭和の医学でしたが、本当に神経を圧迫したら麻痺が生じる馬尾症候群。発症後48時間以内の手術が必要です。
髄核が飛び出したとしても押し出すチカラが解消すれば引っ込みますし、そもそもほとんど水分なので、突発的に麻痺を生じるもの以外放置して問題ないというのが平成の医療です。
股関節形成不全
血統証付きの犬や大型犬に多いらしい股関節の形成不全。骨盤側の受け皿である臼蓋が浅く股関節が外れやすい(亜脱臼)状態のこと指すので、人間の場合は臼蓋形成不全と呼ばれます。犬の場合に言われる『股関節形成不全』はどうにもアバウトな気がします。
パテラ
犬の人達がやたらと連呼する言葉、パテラ。『パテラ』で検索をかけてみれば・・・
- 小型犬に多い「パテラ」とは?治療法と予防法
- トイプードルに多い病気「パテラ」とはどんな病気?
- 犬のパテラとは!グレード別の症状は?
出るわ出るわ不思議なサイトの数々。
そもそも『パテラ』は膝蓋骨(膝のお皿)を指すラテン語です。『小型犬にパテラが多い』なんて想像しただけで気持ち悪いったらありません。
膝蓋骨脱臼の事を略して『パテラ』と呼んでいるようなのですが、“脱臼”は関節が外れる事なので膝関節脱臼ならいざしらず、骨が脱臼するなんて表現がそもそもおかしい。
膝蓋骨は種子骨。筋の端っこである腱の中にあって、他の骨と関節を形成しない浮いている骨です。軟部組織の中にあるのでグリグリ動くのが正常です。
これが動き過ぎて大腿骨の溝から外れてしまうということは、筋・腱・靭帯など軟部組織が損傷しているか、単純に四頭筋が緩みすぎているかのどちらか。診断名自体おかしいのです。
*ちなみに
犬の膝は曲がってる状態がデフォルトですが、膝をピンピンに伸ばして歩くワンちゃんがたまにいます。人間の様に骨と骨を垂直に重ねたほうが楽ですからね。けれど、結果的に四頭筋腱が緩んで膝蓋骨が遊びやすくなります。骨の細い小型犬では膝蓋骨が滑る溝も狭く浅いのでずれやすくなるわけです。
手力整体塾所蔵の資料です↓。寛骨臼や膝蓋骨が滑る大腿骨の溝など、実際の映像でご確認下さい。
どれもこれも『だからどうした』ってはなしなのです。なんだかちょっと難しくてそれっぽいので、知ったら使いたくなる言葉かもしれませんが、そもそも私達の行為は医療ではありませんから病理はほどほどに知っていれば良いこと。だから手力整体塾の授業ではほとんどこの手のお話はしません。
施術における危険を回避するため、施術をおこなううえで特徴のひとつとして知っておいたら良い事であって、詳細を知って「だからどうする」と考えるのではなく「どうしてそうなったか」過程を考える方が余程重要です。
肉体は道具であり感覚器です。道具は使い方で形を変え間違った使い方で壊れます。使い方が変わらなければどんなに上手な施術をしようが手術で形を整えようが元の木阿弥。我々は使い方を変えるお手伝いをするのですよ!
びっこを引くのはなぜ?

『たまにびっこを引く』。そんな状態に気付いたからといって、パテラなど難しい名前をを思い返す必要はありません。自分がびっこを引く時のことを思い出しましょう。
- 正座して足がしびれた
- 足に棘が刺さった
- 膝が痛い
- 足首が痛い
- 股関節が痛い
- 重心の偏り
- 麻痺
犬の場合いの一番に確認すべきなのは肉球です。
勉強するとこういう当たり前な視点を失うことがあるので注意しましょう。
足が痺れるのも膝が痛いのも筋肉のなさるワザなので、見た目でわかるトゲや怪我が見つからなければ隠れているコリを探しましょう。犬の場合は痛いところを指ささないので惑わされることが少なくて助かりますよ。
折角勉強したことが仇となってで当たり前を見逃さないようにしたいものです。
麻痺(動かせない・感じない)だけは私達の領域ではありません。早急にお医者さんへご案内しましょう。
まとめ
これは何度でも言うことですが、整体施術は怪我や病気を治すものではありません。動診などの検査も診断をするためのものではありません。
姿勢と動作から物理的に不自然な状態に気付き、偏った状態を作っているコリを予測する。施術で予測の検証をしつつそこが凝ってしまう理由を一緒に考えていく。
先日も書いたように、身体の中に原因があることは稀なので、施術だけでどうこう出来るものでは決してありませんのでそこのところよろしくお願いします。
動作の偏りや姿勢の歪み、痛みや痺れの元になる筋肉のコリは、多くの場合習慣から生じます。コリはある意味、高血圧などと同じ生活習慣病。整体師が行なうこと全ては、対象が何をどう変えれば良いのか適切なアドバイスをするための行為です。
対象が若い場合、施術の結果動きが変わりそのまま解消してしまう場合も無くはありませんが、『ご本人が変わった』事に違いはありません。対象が人でも犬でも、施術は治るカラダになるためのキッカケでしかないのです。履き違えないようにしましょう。

当たり前な言葉を大切にしましょう。身体の事、健康の事を考えるのに難しい知識は必要ありません。原因は日常生活のなかにある。難しく考えるよりもバカバカしいくらい簡単に。大切なことはいつも当たり前の中にこそあるのです。
難しい病名など、聞いたことがない言葉が飼い主さんから出てきても臆することはありません。正確に診て解剖学の言葉に置き換える方がずっと有意義。ナックリングなんかも同様です。気をつけましょう。
Info
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書いている人
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あっとう言う間に整体師歴18年。現役で施術する傍ら小さな整体塾を主宰しています。当たり前な解剖生理と簡単な物理を繋いだわかりやすい身体の話が得意。釣り/山/島/音楽/映画/生きもの全般/が好き。2020年から自然農の畑をはじめました。
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