『釣りと整体は似ている』。これ、不肖伊藤の持論です。
アングラー(釣り人。ちなみにFishermanは漁師)は、キャスティング次第で結果が変わることを知っています。
いつ、どこへ、どんなキャスティングをするか。先っちょに付いているルアーなり餌なりの差も多少はありますが、釣果の大半はキャスティング(アプローチやプレゼンテーションとも言う)で決まります。
いつ、どこへ、どんなキャスティングをするか・・・・というアクションに対して魚がリアクションを起こすのが釣り。いつ、どこで、どんな体の使い方をするか・・・というアクションによって身体がリアクションするのが、痛みや歪みです。
どんなアクションをするかはアナタ次第。身体はけして裏切らないのです。
バックペイン – 背部痛
故開高健氏も悩まされていたバックペイン。背中の痛み。
肩こりを『肩こり』と表現するのは日本人くらいのもので、世界では『首コリ』か『バックペイン』に分類されることが多いようです。なんの事はない、文化の差です。
釣り人なら必ず感じたことがあるだろう背中の痛み。バックペイン。経絡とか陰陽五行説とか難しい整体チックな話しはしません。とっても簡単な構造力学で解明できるのです。
地球には重力があるので全てのモノには支点と重心があります。この関係が崩れると、1Gは掛け算で身体へ襲いかかります。この時発生する回転系の力を、『曲げモーメント』と言います。
曲げモーメントを釣りの姿勢・動作にあてはめると下の画像のようになります。
ロッドを持って構えてるだけでも、手首や肘はもちろん、肩関節・肩甲骨に上・前方向のモーメントが発生します。とくに支点となっている肩甲骨(を下・後方に引く背中の筋肉)は上・前方向にずーっと引っ張られているわけです。
近頃のバス釣りはロッドがドンドン長くなって短いものはラインナップからはずされているようですが、長ければ長いほど先端のルアーは掛け算で重たくなることを知っておきましょうね。
(JB TOP50プロの御大は、今シーズンからまた短いロッドでジグを扱っているようです。流石わかっている人はわかってるのです。)
少しだけ解剖生理の基礎知識
筋肉の運動は大まかに3種類に分けられます。
- 短縮性収縮=筋肉が縮みながら力を発揮する(物を持ち上げる時の上腕二頭筋など)
- 等尺性収縮=力は入っているが長さは変わらない(持ってキープしている時など)
- 伸張性収縮=力が入りつつ伸ばされる(物を下ろすときの上腕二頭など)
この三種類の運動で筋肉に掛かる負荷は、短縮性<等尺性<伸張性 の順で大きくなります。つまり力を入れつつ伸ばされているところが一番先に痛み出すわけです。柔道家の吉田秀彦選手が総合格闘技へ転身して打撃の練習をしている時に、『背中痛てーー』っと悶絶していたのを鮮明に覚えてます。(ファンだったのでw)
柔道は相手を引き付けるので背中の筋は短縮性。メダルを取るほど引き付ける動作を繰り返して鍛え上げた背中の筋肉でも、打撃を打つことで伸張性収縮を繰り返した結果、悲鳴を上げたわけです。
バックペイン(背中の痛み)の対処法
アングラー(釣り人)なら誰しも感じたことがあるであろう背中の痛み。アングラーでなくても大抵の人は体の前方で腕を使っているので、多かれ少なかれ背中に痛みを感じたことがあるのではないでしょうか。
ようは元に戻してやれば良いので難しいことはありません。
- 縮まったところを緩める・ストレッチする
- 伸ばされたところを締めなおす
ただただそれだけ。
こんな簡単な事もやらずに、骨だ、椎間板だ、関節だ、神経だのと言うのはやめましょうね。
釣りの動作で縮こまった筋肉をストレッチで伸ばす。
引き伸ばされていた筋肉を縮める・締めなおす。
たったこれだけですが、するとしないでは明日の体が違います。明日が違えば、5年後10年後は雲泥の差です。
腹筋・腕立て・・・・・そんな事しなくてよろしい!
トーナメンターなど本気で釣りをしている人なら、身体の事も考えてトレーニングしている人が結構いると思います。トレーニングといえば、『腕立て・腹筋』というが何故か定番。なのですが・・・・・ここまで読んでくださった人は想像つくと思いますが、この二つ、ハッキリ言って逆効果です。
釣りに関わらず、お年寄りがどんな格好になるか考えればわかりますよね。胸筋や腹筋ばかり鍛えたら、上体は丸まりやすくなって背中は余計に引っ張られます。引っ張られないように、引っ張られても大丈夫なように、背筋群を鍛えるのが正解です。
自分から見えて効果の分かるところを鍛えたい気持ちは充分わかりますが、やるならせめて前後両方。前1:後2くらいが良いでしょう。腹筋の2倍背筋やりたくないなら腹筋しな方が良い!
こんなのもおすすめです。
欲しいのはパワーや瞬発力ではなく、バランス感覚と持久力。鍛えるならインナーマッスルが◎です。
左右の差が激しい場合
右だけ左だけが痛むような場合は、左右のブレやネジレが原因になります。
仲良くさせてもらっているTOP50プロ SHINGOさんの後姿。
ボートでバスフィッシングをする場合、こんな姿勢でエレクトリックモーターのペダル操作を続けるわけですが、この時、軸足の足首と股関節に強力な曲げモーメントが発生。周辺の筋肉が凄く頑張ります。(あんまり意識されませんが)
っで、この姿勢で進行方向右側へのキャスト延々つづけていると、右の腰とか左の背中が痛くなってきます。痛みが出る場所は個人差がありますが、ロッドのガイドセッティングととっても似てます。
釣り人ならわかるはず。ガイドと身体の関係
痛みが出る。体が壊れる・壊れそうな時いったい何が起っているのか。万物、壊れる理由はひとつしかありません。『偏った負担』ひとえにそれだけ。身体とて同じであります。
整体のちょっとした極意だったりしますが・・・『ひとつ隣を見ろ』とよく言われます。ひとつ隣の所為で負担が偏っている場合が多いからですが、釣り人らしくロッドに置き換えてみるとその理由が明確に分かります。
一個通し忘れたりするでしょ?(最近の小さいガイドは初老のオッサンにはキツイのです)大物でなければそのまま釣る事もできるでしょうが、ひとつ通しそこねた分、その前後のガイドに余計な負担かがかかります。コレがいわゆる慢性痛の状態です。痛いところ自体に問題が無い事はわかっていただけるでしょうか。
で、そのまま大物を掛けたら、通し忘れたところ(普段機能してないところ)がポキッと折れます。これがギックリ腰などの急性痛です。
ブランク(竿本体)の性能を100%引き出すためにガイドセッティングが重要なのと同じで、身体も隅々まで使って負担を分散させるのがコツ。エレキのペダルも左右の脚で、当然キャストも左右の手で四方八方からでも出来るようにしておきましょう。
慢性痛を解消するのも急性痛を防ぐのも、筋力より何より全部使うこと・分散すること。コレに尽きます!
質問・感想など、ご遠慮なくコメント欄↓にどうぞ!