手力整体塾@からだ応援団のパンチ伊藤です。
ネット上にて「仰向けのつま先向き問題」が未だ続いているようなのでここいらで終止符を打ちたいと思います。
【仰向けに寝ると足が開く】それ当たり前です!
『仰向けで寝る 足の向き』などのキーワードで検索すると・・・
「仰向けに寝た際つま先が外側に向くのは梨状筋が硬いから」とか、
「骨盤が開いているから」とか、
「片方だけ外を向くなら骨盤の歪みが・・・」とか、
AIの要約までも
仰向けで寝る際の足の向きは、つま先が真上を向いて足首が90°に曲がった状態が適切です。この状態を保つことで、足首の関節が固まって変形するのを防ぐことができます。
AI 要約
などというロクでもない状態が未だ改善されないので、根拠ある機能解剖と物理だけを繋いで『寝た時のつま先の向き』を整理します。
股関節の構造と重力
「仰向けに寝た際つま先は真上を向く」と言っている人の股関節のイメージはきっとこんな↓
骨盤から真下に脚が生えているなら、仰向けに寝てもつま先は上を向くのかも知れませんが、実際は・・・
股関節を形成する骨盤側の受け口である寛骨臼は、こんな位置のでこんな向き。だから脚は下ではなくて一旦横へ向かって、125度ほど残して折れ曲がっています。
大腿骨の骨幹部と骨頚部がなすこの角度のことを【頚体角】といいます。
骨は死ぬまで形を変え続けるので、頚体角も幼少期は135度、高齢期には120度と変化しますが、とにかく脚は一旦横へ張り出してから下へ向かっています。
仰向けに寝た時、横へ張り出した【大転子】と呼ばれる部分は宙に浮いています。想像以上後ろに飛び出している踵の骨以外、足の骨はどこも接地していないわけです。
つま先が天井を向くこの状態が維持されるということは、股関節の可動に制限があるということに他なりません。
制限がなければ、横へ張り出した大転子が重力に引かれ床方向へ落ち、そとくるぶし(外踝)が床へ当たるまで止まりません。
だから、股関節の可動に制限がなければ仰向けに寝た時はつま先が大きく外へ向きます。ちょっとお下品に見えてしまうからも知れませんけれどそれが自然なのです。
仰向けだと膝を立てたくなる
仰向けに寝て脚が開かない人、つま先が真上や内側を向いてしまう人の多くは、膝を立てて寝たくなることが度々あると思います。
仰向けでつま先が開かないのは股関節内旋の筋肉が凝り固まっているからですが、股関節を強く内旋させる大腿筋膜張筋は、股関節を屈曲させる筋肉でもあります。つまり大腿筋膜張筋が短く硬い状態だと、つま先は外を向かず、股関節を伸ばしづらく、仰向けだと膝を立てたくなるわです。
仰向けで寝ていると腰が痛くなるなんて人も似たような状況です。
- 股関節の前面をまたぐ筋群(股関節屈筋群)が凝り固まると股関節を伸ばしにくくなる
- 股関節を無理に伸展すると骨盤帯が引っ張らて腰が浮く
- 股関節屈筋群の中で股関節内旋に関与する筋が凝り固まると股関節は外旋しにくくなる
仰向けで寝た時につま先がまっすぐ天井を向いたり内側を向いたりするのと、膝を立てたくなる(股関節を曲げたくなる)のはほとんど同じ理由なのです。
寝相(姿勢)は結果
「骨盤が前傾だから」「反り腰だから」「内股だから」とか言ってしまうのは早合点。骨格を動かすのは骨格筋なので筋の短縮の方が先に生じています。
大腿筋膜張筋を常日頃縮こまらせているから姿勢や動きに制限が出るので。
例えば、いわゆる出っ尻さん
殿筋を使うのが得意なのは良いことだけれど、股関節屈筋群が短縮しっぱなし。こんな姿勢で立っている時間がながければ、仰向けに寝る程度の股関節伸展さえ辛くなります(当然うつ伏せも辛くなります)。
例えば、こんな座り方も・・・
骨盤を立て姿勢よく座る意識が強すぎる女性がたまにやってる座り方。
股関節を内旋させて、自分の脚を椅子の脚の内側から絡めると確かに骨盤は立ちやすくなりますが、おかげで出っ尻さん同様大腿筋膜張筋が短縮しっぱなしになります。
厄介なのは、収縮を伴わない短縮だと筋肉は痛くならないこと。
だから知らず知らず続けてしまい骨格筋のテンションにアンバランスが生じます。結果、負担を強いられる掛け離れたところに痛みが出たり、動作や姿勢がおかしくなったり仰向けで寝られなくなったり・・・自然体から離れていくのです。
仰向けでつま先が外を向かない場合の対応
出っ尻姿勢も脚を絡めた座り方も出来る身体なのでやっていけないわけではありません。むしろたまにはした方が良い。だけどあまり長時間偏ったままだだと元に戻れなくなりますよという事です。
しっかり元に戻してから寝ましょう。
股関節の屈筋群と内旋筋群をじっくりストレッチすれば良いだけです。
股関節をできる限り伸展して屈筋群をストレッチ。腰が反らないようにお腹を引っ込めるのがコツ。
大腿筋膜張筋は股関節の屈曲・外転・内旋に作用します。仰向けに寝てこんな格好をすると、外転・内旋部分によりフォーカスしたストレッチが出来ます。
股関節の屈筋群、内旋筋群をしっかりストレッチして、つま先が外を向いた仰向けで寝られるようにしておきましょう。
まとめ
仰向けで寝るとつま先は開いて外を向く。それはもう機能解剖と物理により抗えない事実。「股関節外旋の筋肉が凝っているから開く」のではなくて「内旋の筋肉が凝っているから開かない」のです。
うつ伏せになると話しは逆。股関節に制限がなければつま先は内側へ向きます。内へ向けると窮屈な場合、梨状筋をはじめとする股関節の外旋筋が凝り固まってるサインです。
何も不具合を感じていないなら別に構いませんが、腰痛・膝痛・肩こりなどが生じているようならそれぞれ初期設定へのリセットが必要です。
一方通行な極論に惑わされずに必ず裏表両から見る癖をつけましょう。誰かの話を鵜呑みにしちゃダメ。自分で両面から確かめて発信しないと恥ずかしいことになりますよ!
つま先の向きって股関節の向きなの?って思った人はこちらも合わせて読んでください↓
知らないと損しかない機能解剖
機能解剖と物理のオンライン講座
機能解剖の丸暗記は意味がない。
大切なのは「なぜ」を繋ぐこと。
物理や自然の摂理、他の生き物のことにも視野を広げると、
身体の「なぜ」が繋がりだします。
死ぬまで使う自分の身体のことを愉しく学びましょう。