

手力整体塾@からだ応援団のパンチ伊藤です。
外反母趾の要素要因として様々なことが言われていますが、人間の身体だけを見ていてもわからないことがあります。人も動物。視点を変えたら見えてきた『蹠行』という取説のおはなし。
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外反母趾を抑制する身体の使い方
(足の親指)母趾の中足趾節関節(母趾MP関節)が内転して、カウンター的にMP関節部分が外側へ張り出してくる外反母趾。関節の変性が進んでいる最中は、スポーツ中や歩行時はもちろん安静時にも痛みを伴う事があり、見た目も含めどうにかしたいと思っている人がわりと多くいます。
それもそのはず我が国での有訴者率は30%ともいわれ、4~5人に1人くらいの割合で外反母趾的な関節の変性や痛みを感じているんだそうです。(ワタクシの感覚としてはそこまで多くありませんが)
おかげで研究が進んで様々な要素要因が言われていますが、その全てが人間の体だけをみて想像しているだけで現実との辻褄が合わないところが多々あります。
専門的に勉強している人が陥りがちな云わば『縦割り』構造がそうしていると思われますが、ワタクシのようなハンパ者が機能解剖学と医学と動物学を横断してみたら、現状言われていることのチグハグさが浮き彫りになったお話しです。
そもそも外反母趾とは
先に触れましたが、機能解剖に則って解説をすると『(足の親指)母趾の中足趾節関節(母趾MP関節)が内転して、カウンター的にMP関節部分が外側へ張り出してくる』のが外反母趾です。

機能解剖学で明確になっている母趾の動作は【屈曲・伸展】【外転・内転】だけで、外反・内反という動作は存在しないのですが・・・・機能解剖を無視した医療用語が実は結構存在します。機能解剖学と医学の間に壁がある現れです。(解剖学に存在しない医学用語が結構あるので調べてみるのも一興です。)。
先日、関節の種類一覧を作成したこともあって、母趾の中足趾節関節についても随分調べましたが、未だ関節の形状が明確に定義されていないことに気づきました。動作は【屈曲・伸展】【外転・内転】だけで回旋は無いので(回旋する筋が無い)、楕円関節(顆状関節)か鞍関節かどちらかなのは確かですが、定義してしまうと「外反母趾」という名称の辻褄が合わなくなって困る人が居るんでしょうね、きっと。
外反母趾になりやすい環境
訪問整体で家族丸ごと施術すると、お母さんと娘さんの骨格がとても似ていて感心することがあります。DNAによる遺伝をまざまざと感じるわけですが似るのはあくまでベースだけ。花粉症の遺伝子を持っていても花粉がないところに住めば花粉症は発症しないように、骨格の変形や変性も環境によって生じたり生じなかったりします。
遺伝半分、環境半分。骨格は、重力や筋力といった『力』で後天的に形を変えます。どんな環境でどの筋肉に負担をかけるかによって外反母趾になったりならなかったりするので、足ばかりを見るのではなく「外反母趾になったのはどんな環境か」を知るのが大事です。
ワタクシの拙い経験から言わせてもらうと
看護師さん、販売員さん、営業職の方・・・・つまり『沢山歩く』人。
歩く事自体は身体にとって間違いなく良いことですが、クセのあるある歩き方に合わせて変性したのが外反母趾。ある意味短期間で生じた『進化』と言えるわけです。
外反母趾の人の特徴
外反母趾になっている、わりと多くの身体をみてきて気付いた共通点を挙げておきます。
- しゃがめない
外反母趾になっている人全員、踵を接地したまましゃがめません。 - わりと扁平足
程度の違いはあれど全員がわりと扁平足です。 - 骨盤が立たない
これは全員ではありません。柔軟に動かせる人も居ます。 - 踵がガサガサ
これはほぼ全員。 - つま先の認識ズレ
全員。 - アキレス腱を切ったことがある
当然全員ではありません。
ここに挙げた特徴を持っていても、あまり歩かなかったり残念な歩き方でなかったりすれば外反母趾ににはなりません。
矛盾する世間の認識
このブログを書くに当たりまた色々と調べ直しましたが、世間で言われている外反母趾の要因は未だに・・・
- 靴の所為
- 足のアーチ減少の所為
この二択。靴の所為と言いつつ歩かないとアーチが崩れるとも述べている場合が多く、何故矛盾に気づかないのか不思議です。
下駄ばかり履いていた明治生の祖父は強烈な外反母趾でしたし、もっと遥か昔8000年前のものとされるイングランドの海岸にある消えない足跡にも古代エジプトのミイラにも外反母趾(内反小趾)が見られることから『靴の所為』ではないことがわかります。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/24/051000261
足のアーチは筋肉よりも靭帯に頼っていて遺伝的要素が強く後天的に変えにくいところ。だけれど、同じ遺伝子を持ち似たような扁平足なのに外反母趾になってい姉妹の足に気づいた塾生がブログに書いてくれているように、それ自体が問題になるわけではないのです。
要因とされるものがトンチンカンなら解消法・対処法も当然見当違い。注意しましょう。
動物学的視点
専門家が専門分野だけを追求して出した苦し紛れの要因や解消法はさておき、人間は・・・
- 人である前に動物である
- 動物である前に物である
という観点を加え視野を広げると、何十年も見落とされてきた事実が見えてきます。
動物(哺乳類)は脚の使い方の違いで【蹄行(ていこう)・趾行(しこう)・蹠行(しょこう)】の3種類に分けられます。
- 蹄行性動物
蹄(ひづめ)で歩く、ウマ・シカ・ヤギなど主に草食の動物(偶蹄目・奇蹄目) - 趾行性動物
趾(ゆび)で歩く、トラ・ヒョウ・キツネ・タヌキなどイヌ科・ネコ科。 - 蹠行性動物
趾から踵(かかと)まで足裏全体を使って歩く、ヒト・サル(霊長目)・クマ科・げっ歯類・有袋類。
(踵までは接地しないが足裏大半を接地するものを半蹠行と呼ぶ場合も )
足跡でみるとこんな感じ↓

蹠行・半蹠行は趾が5本ありますが、趾行→蹄行と趾が減っていきウマに至っては中指一本で歩いています。つま先で地面を蹴り、踵が地面から離れれば離れるほど趾の数が減るのです。
昔々、水中から陸に上がった最初の生物とされるイクチオステガは、発達したヒレを足のように使って歩いたとされていて、趾は7本あったと言われています。後に両生類→爬虫類と進化するわけですが、現在もわりと水辺近くにいる両生類や爬虫類にはしっかり5本の趾があって踵も接地します。歩き方の分類に含まれませんけれど両生類や爬虫類も蹠行に分類されて良い足を持っているのです。
それぞれの動物が暮らす環境を考慮してちょっと前にもブログにしてます↓
機能解剖学的視点
手でも足でも、指(趾)を屈曲すればするほど指先は真ん中へ集まるようにできています。

写真は控えますが足なら尚更。趾を屈曲させたら嫌でも内転してしまう作りになっているのです。是非ご自分の足趾を屈曲させてグーしてみてください。指先がくっつくでしょ?グーしたまま外転できないでしょ?
外反母趾は下駄でも裸足でも発生するので、先の尖った靴による『母趾の内転』や、足底アーチ減少による『足根中足関節(リスフラン関節)の外転』ではなく、趾の屈筋群を鍛え過ぎたことによる変化(進化)です。人間の足は物を掴むようにできていませんが、『つま先で地面を押し過ぎ』『グーし過ぎ』の結果、お猿さんの足の形に近づいていると思うのですがどうでしょう。

つま先の向き
膝が伸びている時のつま先の向きはイコール股関節の向き。股関節がニュートラルにある時、つま先は少し外側を向くように人の体はできています。

左右の踵をつけ、つま先を60度ほど開いて立つ「気をつけ」が脚のゼロ度。『解剖学的基本肢位』とも言われます。筋肉に偏りがないのでアッチにもコッチにも自由に動けるのが【つま先外向き】です。
逆につま先が少しでも内側へ向くと、足関節は底屈ばかりしやすくなり背屈がしにくくなり、同時に股関節の伸展もしにくくなります。

脊椎のラインよりも股関節を伸展できるのは人間だけなのに、その特権を手放してしまったら形が変わってしまうのも無理ありません。
股関節と足首を自在に操る為、つまりそこを跨ぐ筋肉を満遍なく使う為、つま先を少し外に向けて歩きましょう。形変わらなくて済みます。

つま先は外向きが当たり前、世界基準。昨今世界中から我が国へインバウンドが押し寄せていますが、つま先内向きの内股ブリだけは間違いなく気持ち悪がられています。
ここであらためて外反母趾の足をよく見てください。

母趾は本来のポジションをキープしようとしているだけに見えるのはワタクシだけでしょうか。
外反母趾のリハビリとして注意した方が良いこと

【タオルギャザー】
足底の筋をリハビリしてアーチ回復を狙うとされますが、足のアーチは筋肉よりも靭帯に頼るところが大きいし、趾屈筋群の使い過ぎが趾の内転に直結するので、タオルギャザーは逆効果。
趾を器用に動かせるのは良いことですが、鍛えるなら趾伸展の筋と足関節背屈の筋肉。座ってても立っててもできるつま先アゲアゲ運動でガシガシ鍛えましょう。
【ホーマン体操】
大昔(1965年)から外反母趾のリハビリとして定着している『ホーマン体操』。

母趾に幅広のゴムバンドを掛けて、左右のかかとを付けたままつま先を外へ開く運動です。提唱者がどういう意図なのかは知りませんが、結果的につま先を外へ向ける訓練になっているのである程度効果的なリハビリだと思います。ただ、ゴムバンドを掛けるならこの位置↓。

まさかゴムの張力で母趾の向きを戻そうとしているわけではないでしょうから、母趾の内転筋を鍛えてしまわないようにするため小趾あたりにゴムバンドを掛けて股関節の外旋筋(お尻と内ももの一部)をしっかり意識しながらおこないましょう。
【テーピング・装具・幅広の靴】
体は動作に合わせて形を変えているので形だけ変えても無駄。動作を変えましょう。
外反母趾のリハビリとして推奨できること
ひとこと『蹠行』すること。
蹠行は踵を含め足裏全体を使って歩くことですが、とにかく思いっきり踵で地面を押す意識が大事。でないとすぐつま先で押します。
しっかりと踵を使った蹠行をおこなうために・・・
- 徹底的にフクラハギをほぐしてストレッチする
- つま先アゲアゲ運動でスネの筋を鍛えまくる
- 殿筋のストレッチとスクワット(踵で地面を押す練習)
- つま先を外へ向けて歩く(蹠行する)
そもそもロクに歩かなければ外反母趾にはならずに済みます。しかし人の体は長時間歩けるようにできているので歩かなければ別の不具合が出てきます。
外反母趾の痛みや変形に悩んでいるアナタは沢山歩いて頑張ってきた人。ただ少しだけ歩き方を間違えていたのです。
今以上に変形が進まないよう、痛みを解消できるよう、どうか正確な判断をしてください。
最後に
人間ばかりが何故こんなにも多くの不具合に悩まされるのか?それはきっと人間だけが人間らしい生き方・体の使い方をしていないからだと思います。他の動物は他の動物に憧れたりしません。街で飼われている動物はちょっと不憫ですが、多くの動物は体の特徴を活かせる環境で暮らしています。
本来水辺の柔らかい地面を蹠行する構造を持っているのに、ガチガチに固くなった地面の所為で「つま先で地面を蹴る」という間違った歩き方が隆盛を極めてしまった。地面が硬ければそれでも歩けてしまいますからね。
しかし、完全な二足直立の人間が重心を移動させる際は踵で地面を押すのが正解。嘘だと思うなら30kgくらいを担いで歩いてみて下さい。バーベル上げる時につま先で地面押してみて下さい(壊れても知らんよ)。何も担がなくたって体重だけで何十kgもあるのです。踵で地面を押しましょう。それが人間らしい体の使い方です!
7000文字を超えるブログを最後まで読んでくれてありがとうございます。お礼に Microsoft Designer で「Create a realistic image of your bunion」(外反母趾のリアルな画像を生成して)というプロンプトにて描いてもらったイラストをどーぞ。何だこれはw
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