梃子を知らずに整体出来るのかい?

整体施術をおこなう時、目には見えないけれどこの上なく重要な要素が重心や重力の存在。そこから生じる梃子を敵にするか味方にするかで身体の重さや動きやすさは天と地ほど変わります。
筋トレしたわけでもないのに施術後に身体が軽くなったり(良い施術は部分的に重くなります)動作がパワフルになったりするのは、

  • テコが回復した
  • 使える筋肉の種類が増えた
  • 細胞外液が移動して物理的に一時軽くなった

かのどれか。喜ぶべきは上の2つだと誰でもわかると思います。何でもかんでも「かる~い」と喜ぶのは、「甘い」を「美味い」だと思っているアホな食レポと一緒ですよ。

痛みも歪みもテコ次第

梃子を上手に扱えるように、重心を感じ操れる身体を目指す。整体を物質的に表すならそんな表現になります。ので、テコを理解しないといけないわけですが、きっと、読んだり見たり聞いたり頭で考えたりしていてもいつまでたってもチンプンカンプンだと思います。簡単で良いので自分で図を書いて誰かに説明してみましょう。何度か繰り返せば染み込んでくるはずです。

梃子の種類

テコには3種類あります。それぞれ支点と力点の距離によって効率が変わります。

第1種テコ

一番スタンダードなテコが第1種。支点⇔力点、支点⇔作用点の距離が同じなら、必要なチカラも同じ。支点から作用点までの距離が支点⇔力点間の倍なら半分のチカラでOK。ペンチやバールなどがこのテコ。

人体では、環椎後頭関節でのうなづく動作や、肘関節(上腕三頭筋)、股関節、足関節などでこの梃子が使われています。

第2種テコ

支点⇔力点の距離が支点⇔作用点の倍なら半分のチカラでOK。力点が離れれば離れるほど軽いチカラで動かせます。栓抜きなどがこの第2種テコ。

人体では、顎関節や肘関節(腕撓骨筋)でこの梃子が使われています。

第3種テコ

作用点⇔力点と支点⇔力点の距離が同じ時、力点に2倍の力が必要になります。力点を作用点に近づけてもプラスαの力が必ず必要。パワーと言う観点みたら一番効率悪いですが、小さな動きを大きな動きに変換できるのががメリット。ホチキスやトングなどがこのテコです。

人体で一番多く使われているのがこの梃子です。

全てに共通して、支点から力点が離れれば離れるほどローギアになります。ローギアには『軽いチカラで動かせる』というメリットのかわりに、『沢山動かさないといけない』とうデメリットが有ります。逆にハイギアは『結構なチカラが要る』かわりに『ちょっとの動きで大きく動かせる』わけです。自転車のギアを思えばわかりやすいですね。

身体はハイギア

人間の筋骨格は関節(支点)を跨いですぐのところに終わる第3種梃子が大半を占めます。梃子としては効率の悪い第3種のしかもハイギアばかり。ローギアはアノ筋肉くらいしかありません。

ローギア構造が豊富ならもっとパワフルに動作出来るのに・・・と思えなくもありませんが、筋肉の基本的な生理を踏まえれば何故ハイギアなのかはおのずと腑に落ちます。(答えはここ↓)

ただし『停止が起始へ近づく』という一方通行な解剖生理の規則で見た場合にハイギアであるというのが曲者です。実際は起始だって引っ張られて動きますし起始と停止の間は宙に浮いているわけでもありません。

動作する時はハイギア。姿勢が崩れる時はローギア。動作はシンドいのに姿勢は軽い力で(ローギア)ジワジワと崩れていくのであります。

姿勢の崩れは支点・作用点(重心)のズレを生む

知覚されない隠れたコリが軽い力で骨格を動かして姿勢が崩れると、ジッとしてても梃子が発生します。重力がありますからね。
支点からズレた重心(作用点)が重力グイグイ押される。重力にレバレッジが掛かって何倍もの力で身体に襲いかかってくるので、ぎっくり腰などたやすく起こるわけです。

良いも悪いも梃子次第

私達は梃子で動いて梃子で痛んでいます。

  • 効率の良い正の梃子で動ける身体
  • 可能な限り負の梃子を生まない身体

目指したいのはそんな身体です。
だから整体師・セラピストなら、ちょっと難しい梃子の事も説明できるようになってきましょうね。

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