骨格矯正、経絡、ツボ、氣、筋膜、リンパ、その他もろもろ。
ひとくちに整体といっても多様な指標を元に様々な理論・手技が存在します。んが、誰がなんと言おうと基本は筋肉です。
筋肉がなければ骨は動きませんし(つまり歪みません)、狙いが何であろうと身体に触る以上筋肉に触るわけです。筋膜やリンパなど“何か”が変化したとしても『筋肉の反射』という過程ありきの結果だと思いますがどうでしょう。
切ったり貼ったりせず手だけを用いて自分以外の身体を変化させられるのは『無条件反射』だけ。その事実をしっかり骨身に刻んで基盤を固めて欲しいと思います。
筋肉の分類:単関節筋と多関節筋
少し前に、インナーマッスルとアウターマッスルの分類について書きました。
今回は単関節筋と多関節筋。これも新入生が入るたび話題に上がる重要な筋肉の基礎です。
すべての筋肉が単関節筋で作用もひとつしか無かったら整体なんて単純でつまらないものだったと思いますが、実際は多くの筋が多関節かつ多機能を有しているので、本質は簡単だけれど複雑で面白いのが整体なのです。
何故多関節筋が多いか
支点が2つ以上ある
『筋肉はテコを使って骨格を動かす』この事実が骨身に染み込んでいたら自然と見えてくる多関節筋のメリットは、『支点が2つ以上ある』ということ。
(身近?なところだと、支点が2つあって2回の梃子が連動するのはボルトカッターとかワイヤーカッターとか呼ばれる工具があります。名前の通り、パワフルなテコでぶっといボルトを簡単に切れます。)
筋肉が骨格を動かす梃子はパワーよりもスピード重視のハイギヤ構造が多いので、2つの支点で2回のテコを連動させてパワーを補う必要があるのかもしれません。
短縮した分力は出なくなる
筋肉はどこまでも無限に短縮できるわけではありません。起始と停止の距離が短ければ尚更、短縮できる範囲が限られます。
力強く収縮させたいならなるべく長い方が良い。
単関節筋は関節を動かす分だけ短縮するしかありませんが、多関節筋なら、一方の関節を動かすべく短縮する際にもう一方の関節で短縮を防ぐ事ができます。
例えば膝蹴り。股関節を屈曲させる時に骨盤前傾+腰椎前弯では腸腰筋が短縮し過ぎて十分な力が出せません(左棒人間)。無理やり収縮させたら腸腰筋は痙攣を起こすでしょう。
腸腰筋をパワフルに使った膝蹴りを出すなら、骨盤後傾+腰椎後弯で(右棒人間)筋の長さをなるべく短くしないようにするのが◯です。
また、『短縮した分出力が下がる』という一見デメリットな筋肉の生理も、多関節筋では有効に活かされます。
膝を曲げてハムストが短縮⇒ハムストに力が入りにくい。おかげで大腿四頭筋が力強く膝を伸展させることが出来ます。
股関節の伸展にも作用するハムストですが、もし積極的に働いてしまったら膝の伸展を阻害してしまいます。短縮してスイッチが切れる、だから膝が伸ばせる。股関節の伸展は殿筋群が頑張ってやってくれます。
多関節筋のおかげで大きな可動域とパワフルかつスムーズな連動が可能。要約するとそういうことです。この連動が難しいから、ロボットは今でもロボットらしく動いているんでしょうね。
単関節筋のなぜ?
悩んだらとにかく質問を変える。(これ近頃マイブームw)
多関節のなぜ?で行き詰まったら、単関節のなぜ?を考えてみましょう。
単関節筋は短縮を抑制する事ができず直ぐ限界に達します。積極的に縮まって関節を動かすことには長けていないわけです。肩関節や股関節という良く動く関節にまとまって存在するくせに動かすのが苦手な単関節筋・・・・。つまり、良く動く(動いてしまう)関節を固定するために存在していることが、おぼろげに浮かんでくるわけです。
インナーマッスル◯◯とか体幹◯◯などの本当の狙いが見えてきますね。
そういえば腹筋は4枚もあるけれど全て単関節筋。さて、腹筋本来の役割は何でしょうか。上体を起こすような良く見る腹筋運動は必要?不要?。
アレコレと目新しい理論や摩訶不思議なテクニックに走るよりも、ややれば出来ることをコツコツやりましょう。徹底的に筋肉を知る。整体をはじめボディーワーカーには必須のことです。軸が固まればあとは勝手に色々繋がってくる。そこからが面白い本当の勉強になると思います。