肩甲骨はがしの前に肩甲骨の基本的な存在理由を知っておこう

手力整体塾@からだ応援団のパンチ伊藤です。
少し前に【肩甲骨はがし】などという恐ろしげな言葉が流行ったおかげで注目度アップの肩甲骨。どんな形で何処に存在しどんな役割があるのか知らない人が案外多いのでまとめました。おまけで『もし肩甲骨が無かったら』という妄想もしております。

肩甲骨はがしの前に知っておきたい肩甲骨の基礎知識

人間の場合、胸骨と胸鎖関節で繋がる鎖骨、その鎖骨と肩鎖関節で繋がって肋骨の背面に沿うようにある扁平骨が肩甲骨です。

肩甲骨

前面の肋骨側には肩甲下窩という窪みがあって、肩甲下筋前鋸筋の付着部となっています。(建前上、肩甲下筋は肩甲骨側が起始、前鋸筋は肩甲骨側が停止です)

後面(背側側)は肩甲棘という壁で上下に区切られ、上に棘上筋、下に棘下筋小円筋大円筋広背筋の一部が付着しています。肩関節の回旋(内旋・外旋)に関わるローテーターカフ(回旋腱板)は全て肩甲骨からはじまっているわけです。

ローテーターカフの他にも、肩甲骨に付着部を持つ筋肉は、

直接は付かなくても鎖骨や上腕に付着して肩甲骨の動きに関わってくるもの

もっと言えば、骨盤が下丹田を動かすように肩甲骨が中丹田を動かすので、下丹田の状態によってもバランスを取るために肩甲骨は動かされますが、筋肉単体で肩甲骨の動きに関われるのは上記19。菱形筋を大・小で分けても20の筋肉です。

『肩甲骨』でググって上位表示されているサイトには『肩甲骨は大小様々な34の筋肉で支えられ・・・』なんて表記があって思わず記憶をたどっちゃいましたがちゃんと数えたんですかね、この人。驚くよまったく。GoogleのAIもまだまだだなぁ。

肩甲骨は(ほぼ)種子骨

腱(筋肉のはじっこ)の中にあってどの骨とも関節しない骨を種子骨と言います。代表的なのが膝のお皿、膝蓋骨。他にも手の親指付け根にある母指種子骨、同じく足の親趾付け根にある母趾種子骨、手首の小指側でちょっと出っ張って存在をアピールしている豆状骨があります。

関節しているようにみえる肋骨との間には筋肉があるので、鎖骨の先の小さな関節にくっついてブラブラ漂っているのが肩甲骨の実態。それはまるで種子骨なのであります。

膝蓋骨や豆状骨、母趾種子骨が存在しているところとその意義を考えれば、必然的に肩甲骨の意義が見えてきます。
種子骨はパワーを必要とするところにあります。
歩行時、膝には体重の3~8倍の負荷が掛かるという説があったり(この説はどんな計算なのか謎ですが)、歩行のフィニッシュは足の親趾だけで身体支える瞬間があったりと、パワーを必要とするところに種子骨が発生し、種子骨があるところはとてもパワフルなのです。

種子骨は滑車のように筋肉の働きを助ける。支点となってテコの効率を飛躍的に上げてくれるわけです。

種子骨の役割

種子骨はそれをまたぐ筋肉をとてもパワフルする。肩甲骨は筋肉と筋肉の間にあって上肢全体をパワフルにする(ほぼ)種子骨です。(僧帽筋の中に発生した種子骨とも言えますね)

ちなみに、四足歩行の大半は鎖骨がありませんから彼らの肩甲骨は本当の種子骨といえます。胸骨~鎖骨~肩甲骨が関節していたら前肢から着地する際いちいち鎖骨折れちゃうので、彼らの肩甲骨は完全に浮遊したのであります。

肩甲骨は筋肉の悲しいサガを解消してくれる

筋肉は短縮したらしただけ力が弱くなってきます。元の長さを100としたら精々50くらいの長さまでしか縮まれませんし、縮まったら縮まった分出力も落ちます。この生理を補えるのが複数の関節をまたぐ多関節筋。

多関節筋が筋の縮まり過ぎをカバー

一方の関節を動かすために縮まった分をもう一方の関節で引き伸ばして縮まり過ぎを防ぎ、結果関節を大きく動かすことができます。

んが、四方八方複雑な動きが必要とされる肩関節と股関節には単関節筋が沢山あります。上記20の肩甲骨に付く筋肉のほとんどが単関節筋です。単関節筋ではすぐに縮まりきって力が出せなくなる。そこで肩甲骨の出番です。

肩甲骨が動いて筋肉の縮まり過ぎをカバー

共働する筋肉が肩甲骨を動かして縮まり過ぎをカバー。パワフル且つ大きな可動を可能にしてくれるのです。

ひどい50肩、通称フローズンショルダーになると・・・・

フローズンショルダー

腕を上げる際、早々に肩甲骨が動き出します。
肩甲骨は動いているわけですから、上腕と肩甲骨を結ぶ筋肉のどれかがフローズンしているわけですね。

肩甲骨だけ動いてもダメ

『肩甲骨』で検索をかけると肩甲骨ストレッチとか肩甲骨をほぐすと良いこといっぱいとか色々出てきますが、そもそも言葉がおかしいことに気付いたほうが良いです。肩甲骨って骨ですよ。骨をストレッチしたりほぐしたり出来るわけありません。

確かに、肩甲骨が肋骨に張り付いてしまったような人を沢山見かけます。肋骨との間に指が入らない人はいつか確実に太るし痩せにくい。テコを増強する滑車的な役割も果たせないので力強いバンザイも出来なくなってきます。

動きの悪い肩甲骨にあんまりメリットは無いわけですが、ナニ筋をほぐしたりストレッチしたりするのか曖昧なまま肩甲骨ほぐしやら肩甲骨ストレッチやらと騒いでいる人が多いように思えます。

しかも、動けば良いってもんでもない。
【肩甲骨はがし】とかいう恐ろしげな言葉がちょっと流行ったおかげで肩甲骨を動かそうとする人は増えましたが、上記フローズンショルダーのように肩甲骨ばかり動いてしまう場合もあるわけです。

『○○が良い』という単純な話には常に『たまには・・・』というワードを足したほうが良いのであります。

さてお立ち会い。もし肩甲骨がなかったら・・・

当然同時に鎖骨も無いでしょう。上腕と体幹部分は筋肉だけで繋がるわけですが、現状と近い可動を目指したら・・・・

もし肩甲骨が無かったら

コレくらいの筋肉が必要でしょう。まるでエイみたいな形になりますね。しかも筋肉の縮まり過ぎをカバーするために背骨を左右にグニャグニャと動かさなくてはなりません。つまりもし肩甲骨がなかったら蛇や魚のように腕もなくなるのであります。
実際、腕(前肢)がある全ての動物には肩甲骨があって、肩甲骨がない動物はイコール腕がないのです。

まとめ

腕の可動域確保とパワフルな動作のために肩甲骨はあります。動かないのはよろしくありませんが、円の中心側なんだからあんまり大きく動かなくても良い。むしろしっかり固定出来なきゃよろしくないのです。可動の広さよりも筋力よりも、肩甲骨に付着する沢山の筋肉を操って全ての方向に動かせるor固定できるかどうか。大切なのはいつだって基本・基礎。底辺の広さなのであります。

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