手力整体塾@からだ応援団のパンチ伊藤です。
「階段では体重の◯倍もの負担が膝へ・・・」などという文句が太古の昔から現代まで言い伝えられていますが、果たしてそれは本当なのか?また誰がどんな計算で導き出したのか疑問に思ったことはありませんか?というお話です。
大解剖『膝の負担◯倍』説
膝にかかる負担は、平地の歩行で体重の2~3倍、階段の昇り降りでは6~7倍と言われています。たとえば、体重が60kgの方であれば、平地での歩行では120~130kg、階段の昇り降りでは360~420kgの負荷が膝にかかります。
体重が1kg増えるごとに膝にかかる負担は2~3kg増えるといわれており、体重が重くなるほど膝にかかる負担は大きくなります。肥満は変形性膝関節症の原因の一つであり、体重を減らすことは膝痛への治療の一つと言えるでしょう。
AI要約
だから痩せましょうという文章をあちこちで見かけますが、どこの誰がどんな計算のもと導き出した数字なのか定かじゃない。なのに、整体師・療法家はもちろんお医者さんまでが当たり前のように言いふらしています。
理不尽なことを放っておけないワタクシは文献など探ってみましたが、信頼できそうなソースに辿り着くことはできませんでした。
そもそも『膝』というのが膝関節を指しているのか、膝をまたぐ筋筋膜を指しているのかさえも定かじゃない。誰が言い出したのかもわからない事をまことしやかに広めるのはいかがなもんでしょうかねぇ。
スクワットで見るモーメントの違い
「◯倍」ということはきっと【テコ】(モーメント)の事を言っているのだと思うので、スクワットを例にモーメントの違いを見てみましょう。
支点の真上(重力垂線上)にウェイトがあれば物の重さは1倍、元のままです。ウエイトが支点の垂線から離れたら離れた分だけ掛け算になって支点の負荷が増えます。この力を『モーメント』と言います。
M(モーメント)=W(ウェイト)×L(レンジ)
膝を支点としてみた場合、ダメスクワットのWは支点からズレているのがわかると思います。膝の屈曲度合いは小さいのに、体重×レンジの負荷が大腿四頭筋に掛かるわけです。
足首(距腿関節)を支点として見た場合は、ダメスクワットだとガッツリつま先荷重になるのが見て取れると思います。
先日書いた記事を合わせて読んでもらうと、ダメスクワットがいかにダメかよく分かると思います。
あくまで整体師のワタクシは筋肉でベースお話していますが、画像や数値に異常がないと手も足も出ない医療の場合はちょっと見解が違うようです。
関節反力
色々調べていたところ『関節反力』なる実に医療らしい言葉に出会いました。
『反力』とは押し返す力のこと。例えば直立している時、体重60kgなら地面からの反力も60kg。荷重が反力を超えたらめり込んでいきますし、反力が荷重を超えたら跳ね返されます。モノが静止できるのは荷重と反力が釣り合っているおかげ。逆に、早く走ったり高く飛んだりできる人は、筋力もさることながら反力の使い方が上手いわけです。
反力にも三種類あって結構ややこしく、『関節反力』となると更にややこしい。
要するにテコの原理を介して関節面に生じる反力のことなのですが、理学療法士・作業療法士の国家試験だと「Q.手に鉄球を持ち、図に示す構えを保持した場合肘関節に掛かる関節反力は・・・」なんていう問題が出るようです。
いかにも国家資格。この問題の正解がわかったところで何の役に立つんでしょうか。
画像や数値に異常が現れないと手も足も出せない医療は、未だに関節の変形・変性を痛みの原因にしたがりますが、器質的変性と痛みは別物。だから関節反力なんてどうでもいいのです。(人工関節を作っている人には重要だと思いますけど)
医療現場を飛び出し独立するPT/OTが激増していますが、単なる整体師/療法家になったからには医療の見解の多くを手放さないと大変です。我々は医療者じゃありませんからね。
関節や椎間板などの変形・変性は原因じゃなく結果。
ややこしい問題を解いてテストに合格することよりも大事なことがいっぱいあります。咀嚼して血肉になることだけチョイスしていったら良いんじゃないでしょうか。
まとめ
まことしやかに言い伝えられる『膝の負担◯倍』説だけれど、平地で何倍とか階段で何倍とか、1kg増量で2、3kg増えるとかそんな単純な話じゃありません。テストなら人が決めた正解がありますが、100点満点の正解なんて無いのが【自然】です。
膝の負担を減らしたかったら、減量よりも機能解剖と物理を熟知してテコの活用を見直すほうが余程重要ですよ!
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