手力整体塾@からだ応援団のパンチ伊藤です。
【体幹】の定義が曖昧なまま体幹トレーニングが行われている現状を打破すべく、当たり前なことを繋いで見えてくる体幹の事実をお届けします。
身体の部位名おさらい
身体の部位には、解剖学によってそれぞれに名称が付けられています。きっと多くの方が耳にしていると思いますが、部位と名称がきちんと一致している人は意外と多くありません。まずはこの段階から、正確な使い分けを心掛けたいものです。
しかし何だってこんな名称にしたのか・・・上腕なら下腕、下腿なら上腿にしてくれれば良いものを、いったい誰が決めたんでしょうね。
他の各部位にも以下のような正式名称があるます。
- 鎖骨+肩甲骨で【肩甲帯】
- 鎖骨+肩甲骨+腕で【上肢】
- 腸骨+恥骨+坐骨で【寛骨】
- 寛骨+仙骨+尾骨で【骨盤(骨盤帯)】
- 骨盤帯+脚で【下肢】
- 頸椎7+胸椎12+腰椎5+仙骨+尾骨で【脊椎(脊柱)】
- 12対の肋骨と横隔膜で区切られた【胸腔】
- 横隔膜から骨盤底筋群までを【腹腔】
などなど、正しく認識しておきたいところ。この辺りまでは解剖学的にきちんと定められているので調べれば誰でもわかりますが、上半身と下半身の境目は何処か?はたまた問題の【体幹】とはいったいどこなのか?これだけ一般名詞として広まっているのに明確な定義はされていません。
上半身と下半身の境目は何となく臍(サイと読みます。へそです。)と認識されているようですが、はてさて体幹はどの部分を指すのでしょうか。
解剖学に【体幹】という部位はありません
解剖学できちんと定義されている部位名さえ曖昧な自称『専門家』が、定義されてない【体幹】を好き勝手に言いたい放題しているのが現状です。
「体幹とは」などで検索をかけてみれば、概ね以下のような様々な意見(って言うか堂々と言い切ってるけど)が溢れていてまさにカオス。
- 背骨
- 胴体
- 胴体部分のインナーマッスル
- 下丹田あたり
実態がないのに言葉だけが独り歩きしてメジャーになってしまったので仕方ありませんけれど、調べれば調べるだけ、答えが見つかるどころか悩みは増える一方だと思います。
実態がないんだから調べても無駄。当たり前を繋いで考えることが重要です。
ちなみに、胴体部分を体幹としている記載が目立ちますが、だったらそのまま『胴体』で良いと思うんですがね。
体幹ができている人の動きから体幹を知る
壁に当たったら方向を変えてみる。視点・視野・視座を変えてみれば、見えなくて妄想しかできなかったことが現実として見えてきます。体幹がどこだかわからなければ、「体幹ができている」といわれる人達の動きを見れば良いのです。
スポーツ界でいち早く体幹トレーニング(スタビライゼーション)を取り入れたサッカー選手の動きがとても参考になります。本田、長友、ロナウド、メッシ・・・(若い選手を知らなくてすみません)彼らは共通して『体幹ができてる』『軸がブレない』と称されます。
軸や体幹は何処を指しているのか、彼らの動きをつぶさに観察すれば、自称専門書を読むより遥かに的確に【体幹】を理解できますし、「軸がブレる」のはどんなシチュエーションなのか考えれば、ブレないようにする為に必要な【本当の体幹トレーニング】が浮かび上がります。
上・中・下の丹田がブレない
頭部・胸部・腰部、それぞれの重心にあたるところにそれぞれの丹田があります。
静止している時はもちろん激しく動いている時も、上・中・下の丹田に軸が通っているから『軸がブレない』『体幹ができている』と言われるわけです。
ひとつの丹田だけ動かしたり逆に固定したりするのはとても不自然。上が動いたら下も動きます。ココがとても重要なのに、自称含め体の専門家と称される方々の多くが頭を省いて『体幹』としている場合が多くて驚きます。
広い意味で体幹とは、胴体(胸部・腹部・腰部・背部)の部分を指します。厳密には腹筋の一番深部にある腹横筋、そして横隔膜、背骨に一番近い多裂筋、骨盤の最下部で臓器を支える骨盤底筋群に囲まれた、腹腔壁を構成する身体の中心部分を指します。
(大阪府柔道整復師協会のサイトから抜粋:リンク切れ)広い方の意味では胴体のことを、狭い方では胴体の深層部の4つの筋肉、つまり横隔膜(おうかくまく)、腹横筋(ふくおうきん)、多裂筋(たれつきん)、骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)を指します。この4つの筋肉を総称してインナーユニットともいいます。
(ストレッチポール公式ブログから抜粋)
どちらにも“引用”のタグは付いてませんけれどほとんど同じ文章なので、きっと何かの本に書いてあるのでしょう。専門家がこれで良いんでしょうかね。
『体幹が出来ている』と言われる方たちの動きを踏まえ、当たり前に考えればココ↓が体幹です。
頭部・頸部は上丹田を、胸部・肩甲骨は中丹田を、腰部・骨盤は下丹田をそれぞれ動かします。それぞれが連動してこそ軸が保てるので、頭を含めずに体幹としている専門家は全くトンチンカンだと思います。いや、まぁ定義はされてないので良いんですけどね。
そういえば、先日こんなものをポチりました。
縦方向・横方向と回旋。三軸にモーターが仕込まれていて手振れの無いぬるぬるした動画が撮れて中々面白いです。
縦・横・回旋と聞いてアノ関節が浮かんだ方は中々の身体オタクですね。ジンバルと同じように三軸でブレを解消できる関節をボク等は持っているのです。
ブレない動作は何処から生まれるか
ブレない動作『ランニング編』。誰が見ても一番左の人の体幹ができていると思うはずです。さて違いは何でしょうか。
ブレない動作『ドラミング編』。たぶん世界一有名な日本人ドラマー神保彰さんです。ドラム叩いて首痛めたりした人の動画を探して比べてみてください。
日常動作でも、体幹が出来ていて軸がぶれない人は右のように動きます。面白いことに、ぎっくり腰の人も右の動きになります。『痛みは警告』とよく言いますが、ぎっくり腰でさえも間違いを正すための警告なんですね。
さて、ランナー、ドラマー、ぎっくり腰と見てきて共通点に気づきましたでしょうか。
本当の体幹トレーニング
上・中・下の丹田を結ぶライン『軸』がブレない状態を作り出すメニューこそが体幹トレーニングということになります。
近頃流行りのプランクでもこの軸を守るのが最大の注意点です。
なんだけれど、頭の位置の大切さを伝えている情報はほとんどありません。自称専門家の皆さんが言う『体幹』には不思議なことに頭が含まれないようですから仕方ありません。
体幹とは『頭蓋~頸部~胸部~腰部~骨盤』の事。スタビライゼーションの生みの親、小林先生が重要性を説いてらっしゃるように、色んな姿勢で『頭蓋~頸部~胸部~腰部~骨盤』までの軸を作っていくのが、プランクをはじめとしたスタビライゼーションやピラティスなど体幹トレーニングの本来目的です。頭の位置を無視しないようにしましょう。
スタビライゼーションなどのバランス系トレーニングで軸を支えるインナーマッスルを活性化させるのと同時に、もうひとつ重要なのが、四肢を柔軟かつパワフルにする事。
上の2つの動画とイラストを見れば一目瞭然。上肢と下肢がきっちり働くから軸がブレずに済むのです。
動画撮影の手振れを防止するジンバルが、縦方向・横方向・回旋方向と三軸で動いてブレを解消するように、股関節と肩関節が、屈曲⇔伸展(縦)・外転⇔内転(横)・外旋⇔内旋(回旋)と動いて軸がブレるの防いでくれます。
ワタクシの拙い経験では、スタビライザーとして働くはずの股関節・肩関節の可動が狭く非力ゆえに、本来あまり動かないはずの背骨が動き過ぎて、頸・背・腰のトラブルが出ている人が圧倒的に多いと感じています。
身体も心も軸のある【五重塔】を目指す
五重塔はこんな構造になっているんだそうです。心柱に乗っかっているヤジロベエみたいな感じですね。だから地震や台風を柔軟にイナシて今日まで残っているのです。現代の科学をもってしても解明しきれていないようですが、かのスカイツリーもこの【心柱構造】を真似ているところがあるようです。
軸が定まっていれば外側を固める必要はありません。外側が動くからこそ軸が動かされずに済みます。外側を固くして軸の無さを誤魔化しても無駄なのであります。
体幹などという概念がなかったずっと昔ら、五重塔や合気道などの武道が、その重要性を教えてくれています。昔の人はなんでいつも凄いんでしょうね。
まとめ【体幹から頭を省くな!】
大事なので何度も繰り返しますが、体幹はココです↓
頭の存在を忘れないように。
で、ココがブレないようにするために必要な本当の体幹トレーニングは・・・
- 上中下の丹田を結ぶ【軸】を通しておくために、頭部~骨盤までのインナーマッスルを活性化させておくこと(スタビライゼーションなどバランス系)
- 体幹のブレを防ぐために四肢を柔軟かつパワフルにしておくこと(ストレッチ+スクワットや懸垂)
です。
異論がある方は是非コメントください。論破して差し上げますww