手力整体塾@からだ応援団のパンチ伊藤です。
整体師・セラピスト他みんな大好き骨盤の仕組みと機能を一挙にまとめたエントリです。ついでに話題のAIにも色々訊いてみました!
「骨盤とは何か」各種AIに訊いてみた
まずはサラッとAI先生のご意見を伺いましょう。質問はあえてザックリと「骨盤の重要な役割を教えてください」としました。
まずはChatGPT3.5先生。
骨盤は人間の体で非常に重要な役割を果たしています。その主な役割として以下の点が挙げられます:
姿勢のサポートと安定性の提供:
骨盤は、脊椎の一部を形成し、上半身と下半身を結びつける構造です。適切な位置にある骨盤は、体の重心を支え、正しい姿勢を維持するための基盤となります。良好な姿勢は、身体の不快感や痛みを軽減し、筋肉や関節の負担を軽減します。内臓器官の保護:
骨盤は、子宮、膀胱、直腸などの内臓器官を包み込むような形をしています。骨盤底筋などの筋肉は、これらの内臓器官を支え、保護します。特に女性の場合、妊娠中や出産後に骨盤の適切な状態が重要であり、骨盤の健康は女性の健康と関連しています。運動の基盤:
骨盤は、歩行や走行、座位から立ち上がるといった日常的な動作において重要な役割を果たします。骨盤の安定性や適切な動きは、運動能力や運動効率に影響を与えます。また、多くの筋肉や靭帯が骨盤に結合しており、適切な姿勢と運動機能を保つために必要な安定性を提供しています。これらの理由から、骨盤の健康は全身の健康と密接に関連しています。バランスの取れた食事、適切な運動、姿勢の矯正、そして必要に応じて医療専門家の指導を受けることが、骨盤の健康を維持し、体全体の調和を保つ上で重要です。
ChatGPT3.5
ついでに、AIが話題になり始めた頃の回答も乗せておきます。比較してみてください。
骨盤は、人間の体において非常に重要な役割を果たしています。以下に、骨盤の主な役割をいくつか挙げてみます:
姿勢の維持:骨盤は体の中心部に位置し、上半身と下半身をつなぐ重要な役割を果たしています。適切な姿勢を維持するためには、骨盤の位置やバランスが重要です。
腰と背骨のサポート:骨盤は腰椎と背骨を支える役割を果たしています。適切な位置にない場合、腰痛や背中の問題が引き起こされる可能性があります。
内臓の保護:骨盤は内臓を保護する役割も果たしています。特に、子宮や膀胱、直腸などの重要な臓器を守る機能があります。
歩行と運動のサポート:骨盤は脚の動きをサポートし、歩行や運動の安定性を提供します。適切な骨盤の位置は、体のバランスと歩行パターンに大きく影響します。
出産時の役割:女性の場合、骨盤は妊娠期間中の子宮や胎児のサポートに重要です。また、出産時には骨盤の開きが頭部の通過を可能にし、安全な出産を助ける役割を果たします。
これらの理由から、骨盤の適切な健康維持や姿勢の改善は、身体全体の健康と機能にとって重要です。定期的な運動や姿勢の注意、必要に応じて専門家の指導を受けることが大切です。
ChatGPT3.5
大筋では同じようなことを言ってますが、ところどころニュアンスが違っているので受け取る人によって意味が違ってくるかもしれませんね。
古い回答では『出産時には骨盤の開きが頭部の通過を可能にし・・・』としていた部分が新しい回答でなくなっていたり、『必要に応じて専門家の指導を・・・』としていたところが『必要に応じて医療専門家の指導を・・・』に変わっていたり、よりエビデンスやコンプライアンスを重視してきている様が読み取れます。病変がなかったら医療は役に立たないんですけどね、ホントは。
続いてはBingChat(Copilot)先生。
骨盤は人体の中でも非常に重要な部位で、以下のような役割を果たしています:
上半身を支える役割:骨盤は身体の中心に位置し、上半身と下半身をつなぐ重要な役割を果たしています。骨盤が正しい位置にない場合、体重のかかり方が偏ってしまい、肩こりや腰痛といった不調が現れることがあります。
歩行をサポートする役割:歩く際、骨盤は足からの衝撃を吸収する役割があります。足から伝わる衝撃は全身に及びますが、その衝撃を骨盤で吸収することで、余分な負担がかからずに上半身を支えることができます。
内臓や生殖器を守る役割:骨盤の中には内臓や生殖器があり、それらを支える役割があります。大腸や膀胱をはじめ、子宮、卵巣を守っています。
座る際に身体を支える役割:座る時は、骨盤の一番下に位置している坐骨が上半身を支えています。
以上のように、骨盤は身体の様々な機能を支える重要な役割を果たしています。また、骨盤のズレは、肩こりや腰痛など身体に様々な影響を及ぼすことがあります。
Copilot
AIが「骨盤のズレ」なんて言っちゃいけないんじゃないかな。Copilotになる前のBingChat先生にも訊いていました。
骨盤は人体の重要な部分で、多くの重要な役割を担っています。
骨盤は腰周りの骨の総称であり、骨盤という名前の骨は存在しません。 いくつもの骨が組み合わさった腰周辺の構造を骨盤と呼びます。 骨盤は、中央に脊椎からつながる逆三角形をした仙骨が位置しその下に尾骨があり、その左右に1対の寛骨があります。 寛骨は腸骨・恥骨・坐骨の3つの骨から構成されており、仙骨と腸骨は仙腸関節でつながっています。骨盤は上半身と下半身を繋ぐことが大事な役割です。 骨盤は内臓を守ることも役割のひとつです。 また、上半身と下半身の動きを連動させることも大事な役割です。 上半身の動きは腰椎を経由して骨盤に伝わり、下半身の動きは股関節経由で骨盤に伝えられる。
BingChat
BingChatがChatGPT4ベースのCopilotに変わった様がよくわかります。Copilotになっても変わらず参照元のリンクが貼られるところに好感持てます。元ネタには著作権があるはずですからね。そんなわけで当ブログではAIの回答を引用タグで囲っております。ChatGPTを開発するオープンAIとマイクロソフトがNYタイムズに提訴されましたしね。
最後に年末公開され試験運用中のGoogle大先生率いるBard。
骨盤の重要な役割は、大きく分けて以下の3つです。
体重を支える
骨盤内臓を保護する
運動の軸となる
体重を支える骨盤は、立位や歩行時、体重を支える重要な役割を果たしています。体重は背骨から仙骨を経て骨盤に伝わり、左右の股関節から足へと伝えられます。骨盤が安定していないと、体重がうまく分散されず、腰痛や膝痛などの原因となることがあります。
骨盤内臓を保護する
骨盤は、骨盤内臓を保護する役割も果たしています。骨盤内臓には、膀胱、尿道、子宮、卵巣、直腸、肛門などがあります。骨盤はこれらの骨盤内臓を包み込み、外部からの衝撃から守っています。
運動の軸となる
骨盤は、上半身と下半身をつなぐ重要な部分であり、運動の際には骨盤が軸となって、上半身と下半身の動きを連動させます。骨盤が歪んでいると、歩行や姿勢などに影響が出ることがあります。
「骨盤の重要な役割を教えてください」という質問に対して、役割以外のことも勝手にに答えているChatGPT群よりも的を射てると思います。
検索が発達した時点で知識を暗記する必要は全くなくなったわけですが、検索して情報を拾ってまとめ直すという作業すらほとんど要らなくなった気がします。
お店やサービスをさがすならSNS。調べごとをするならAI。ウェブサイトやブログはどこへ向かうんでしょうかねー。
整体歴20年が思う【骨盤】
さて此処からようやくワタクシのターン。重要な役割はもちろん物理を合わせた骨盤の機能と生理について書いていきます。まずはAI陣が共通して語っていることへのツッコミを。
骨盤が支えているわけじゃない
AI陣は「骨盤が内臓や体重を支えている」と答えていますが、わたしの言葉で言うと骨盤は単なる受け皿。しかも穴の空いた受け皿です。
穴を塞いでいる骨盤底筋群がもし無かったら、糞尿どころか腹腔の内臓がダダ漏れになりますw。実際は内臓自体が筋筋膜であちこちと繋がっているのでダダ漏れにはなりませんけれど、脱肛とか膣脱などなどはリアルにあります。
上半身と下半身をつなぐ?
全てのAIが「上半身と下半身をつなぐ・・・」と答えていますが・・・イメージしてみてください。上半身/下半身の境目ってどこですか?オンライン講座で最初の方に質問するのですが多くの方が「へそ」(臍サイ)と認識しているようです。
臍はどこらへんかというと、概ね腰椎の三番目くらいです。
実は、上半身/下半身という分類は解剖学に存在しないのでどこで線を引いても間違いじゃありませんが、多くの人が臍を境だと認識していることを踏まえたら「骨盤は上半身と下半身をつなぐ・・・」というAIの回答はちょっと疑問。
ちなみに、一般的なイメージでは臍が境ですが機能解剖学的な視点では胸椎の12番が境で、上半身と下半身を繋ぐのは大腰筋(腸腰筋)です。
骨盤が内臓を保護?
これも各AIが語ってくれていますが、犬猫をはじめとした四足の薄っぺらい骨盤に内臓を保護する能力があるとはあまり思えません。
四足に限らず人間にほど近いお猿さん達の骨盤も薄っぺらい。
人間の骨盤は内臓を包み込むような冠状をしていますが、骨盤がない動物が居ることも考えたら保護機能はあまり重要じゃないことがわかります。
腹腔の内臓を保護しているのは腹筋群が織りなす『腹壁』と言ったほうが良いのではないでしょうか。
と思って「腹腔内の内臓を守る役目を担っているものは?」と質問の形を変えてみたら「腹膜です」という答えが返ってきました。まだまだだな、AI(笑)。
AIへのツッコミはこの辺にして、ここから先は事実だけを繋ぐワタクシの意見です。
整体師歴20年が思う【骨盤とはナニか】
骨盤帯の成り立ちと構造
AIも勝手に答えているように『骨盤』という骨はありません。『骨盤帯』を形成する骨の総称が骨盤です。
人は誰しも350くらいの骨をもって生まれてきます。成人に近づくにつれあちこちで癒合して最終的に206くらいになります。
骨盤帯とて最初はバラバラ。5つの仙椎が1つの仙骨になるのも、腸骨・恥骨・坐骨が癒合して寛骨になるのも概ね二十歳頃。更に歳を重ねると左右の恥骨すら癒合します。
恥骨結合は、加齢にともなう変性などもしっかり研究されていて定義がまとまっていますが、仙骨と腸骨からなる仙腸関節について純粋な解剖学での定義がまとまっていないのが現状。わかった風な人はいっぱいますが、わかってないのが仙腸関節です。
わかっているのは、こんな形↓をした耳状面と呼ばれるザラザラな面が接点であること。軟骨や関節包がないこと。靭帯でがんじがらめなこと。高齢になっても癒合しないこと。
癒合しないことから「動く」とされるんでしょうけれど、動かすための構造を持ち合わせていない不思議な関節?が仙腸関節です。
骨盤帯の重要な役割
【丹田を操る受け皿(天秤)】
「へそ下三寸」といわれる人体最大の重心【臍下丹田】が骨盤のど真ん中あたりに存在します。
地上では支点と重心が垂線に重ならないとモノは静止しません。逆に言うと、重心がズレていたら勝手に動きます。無機物・有機物関係なく万物共通の物理です。
最大の重心【臍下丹田】が乗ってる受け皿が骨盤帯。上下・前後につく筋筋膜で骨盤の傾きを操って、止まったり動いたりしているのです、わたしたち。
動くのはあくまで股関節と下部腰椎。動かすのは前後・上下の筋筋膜。骨盤そのものがズレたり歪んだりすることはありません。
丹田について詳しくはこちら↓
【大きな筋肉がつく大きな面】
横幅の半分以上の前後幅があって冠状を呈しているのは人間の骨盤だけ。他の動物のような薄っぺらい骨盤でも、前後には筋肉のつく面が十分にあるわけですが人の骨盤には横にも大きな面があります。おかげで股関節を『外転・内転』させる筋群が沢山付着できます。
完全な二足歩行のために冠状の骨盤はなくてはならないのです。
【大腿骨との接点股関節が運動の要】
骨盤の寛骨臼と大腿骨頭からなるのが股関節。
移動する時はもちろんのこと、頭だけ動かす時も腕1本でも寝返りでも・・・ほとんどすべての動作で臍下丹田の介入がある→股関節を支点とした骨盤の傾きがきっかけになっています。
重心をどこに位置させるかで動きやすくなったり動きにくくなったりする。筋力よりもずっとずっと重要な運動の要です。
【造血】
若い頃は大腿骨などの長骨でも血を作っていますが、成人以降はもっぱら扁平骨が造血をしているようです。この点に触れたAIは何故かいませんでしたね。
骨盤がないとどうなるのか
人と同じ脊椎動物に属しながらも骨盤がない動物を良く見ると、骨盤の役割が同時にみえてきます。
骨盤がない脊椎動物は『魚類・ヘビ・イルカ・クジラ』。つまり脚(後肢)がない動物だけ見事に骨盤がありません(クジラ・イルカにはちょっとだけ名残があります)。
骨盤がない動物にも内臓はあるし上半身/下半身もあるし(どこかは知らんけど)造血もしてる。つまりこれらの働きは骨盤だけに頼ったものではないということがわかります。
極端に言えば、脚(後肢)が無ければ骨盤はなくても良い。脚のために存在するのが骨盤なわけです。
まとめ
- 若い頃の骨盤は未完成。ゆえに若年期の姿勢や動作は完成形に影響大!
- 人の骨盤は完全二足歩行のための形。しっかり二足歩行しないと機能低下やむなし!
人の骨盤だけを穴が空くほど見るのではなく、他の動物の身体やそれぞれが暮らす環境を合わせてみましょう。人の骨盤の「なぜ」が見えてきます。(骨盤に限った話ではありません)
視線を変えたり視野を変えたりすると【気づき】が増えます。「あっ!」と自ら気付ける瞬間を愉しみましょう。
AIが急速に進歩する中、一見意味のないこと無駄なことくらいしか、ワタシ達のやることなくなってきますからねww。
知らないと損しかない機能解剖
機能解剖と物理のオンライン講座
機能解剖の丸暗記は意味がない。
大切なのは「なぜ」を繋ぐこと。
物理や自然の摂理、他の生き物のことにも視野を広げると、
身体の「なぜ」が繋がりだします。
死ぬまで使う自分の身体のことを愉しく学びましょう。