手力整体塾@からだ応援団のパンチ伊藤です。
「右のつま先が外側向いてますから右の骨盤が開いてますね」
いかにもそれっぽいことを言う整体院は未だたくさんあるようですが、そんな整体院に通っている人が読んだら次回の予約を取り消したくなるエントリです。

正直に言えば、昔々のワタクシも【教わった通りに】同じことを言ってました。見聞を広げ臨床を積み、ブラッシュアップしてこなかったら今でも同じことを言ってる可能がなくは無い。いやはやゾッとします。

寝転がった時、つま先が自然に向く方向は何処なのか、当たり前なつま先の向きを手に入れるにはどうしたら良いのか、このエントリで、なんちゃって整体師よりもイケてる知識を手に入れて下さい。

仰向けに寝た時足(つま先)が開くのは骨盤が開いているから!?

仰向けで寝たらつま先はどこを向くか

つま先の向きが示すもの

つま先が外へ向いたり内へ向いたりするのはどこかの【関節】が動いていることの現れ。骨盤という関節はありませんからもうこの時点で骨盤は除外です。拍子抜けするでしょう?でも事実です。

では、つま先の向きを変えられる関節はどこにあるのか見ていきましょう。

爪先の向きは膝関節の【内旋・外旋】で変わる

大腿骨と脛骨からなるのが膝関節。曲がっているときの膝関節では、膝下(下腿)を内外に捻る【回旋】という動作が可能になります。下腿を内旋させればつま先が内向きに、外旋させれば外向きになります。が、あくまでも『膝が曲がっている時』という条件付きで可能になる動作です。

膝には他の関節に無い半月板というものがあって大腿骨の凸凹が収まるようになっています。しっかり伸展する際にスクリューホームムーブメントと呼ばれる脛骨の軽い外旋を生じつつピタッと連結されるのです。

つま先の向きを変える膝の構造

言い方を変えると、伸びた膝でつま先の向きを変えるのは不可能という事です。

爪先の向きは股関節の【内旋・外旋】で変わる

骨盤(寛骨)と大腿骨で構成されるのが股関節。球状の大腿骨頭が臼状の寛骨臼に収まる臼状関節で、前後(屈曲・伸展)と内外(内転・外転)の二軸に加え、軸を保ったまま捻る動き(内旋・外旋)も出来る、最大級の可動域を誇る関節です。

股関節頸体角と大転子

注目してもらいたいのは寛骨臼の位置と大腿骨の形。

ガンダムやアシモなどのロボットを見慣れているせいか、股関節は骨盤の下にあって大腿骨は真っ直ぐ下へ伸びていると思っている人が相当に多いですが、実際はご覧の通り、横方向へ開いた寛骨臼に120°~130°ほどオフセットした大腿骨がはまり込んで、球状の骨頭が転がるように動きます。軸を保った内旋・外旋でも、横に出っ張った【大転子】の部分は前後に動くわけです。

大転子が前後に動く内外旋の際に膝がきちんと伸びて半月板が機能していれば、股関節の向きはそのままつま先の向きに反映されます。

つま先の向きを変えるのは膝関節か股関節です
基本的に、つま先の向きを変えられるのは膝関節と股関節です

脊椎の回旋でも変わる

ちょっと無理なやりな発想ですが、脊椎を捻ってもつま先の向きは変えられます。んが、仰向けに寝てこうなる人はあまりいませんね。

脊椎の回旋でつま先の向きを変える

足首ではどうか?

意外なことに足関節(距腿関節)でつま先の向きを変えることはできません。

犬の足根骨と中足骨

こちら犬の足根骨(人間の距腿関節もほとんど同じ作りです)。
滑車みたいな形で出っ張っている距骨に脛骨が乗っかり、外側から腓骨が挟み込んで距腿関節を形成します。前後の動きに特化した作りで捻る動きはできないのがわかりますね。
実際は距踵関節やショパール関節、リスフラン関節のおかげで、足だけ動かしても幾分つま先の向きを変えられます。足の関節はこちら↓
https://text.tedikara.com/bone-joint/foot_joint/

仰向けに寝た時つま先はどこを向くのか

骨盤の歪みや開きなどと称されるものとつま先の向きは、一切関係がない事をおわかりいただけましたでしょうか。

では実際仰向けに寝た時つま先は何処を向くのか。ここまで読んでくれた人なら骨格標本を寝かせただけで一目瞭然、納得いただけるはず。

仰向けに寝ると股関節は宙に浮く!だから外旋してつま先は外を向くのが自然です


大腿骨は一旦横向きに出て120°ほどオフセットされて下方へ伸びています。そんな状態で宙に浮いているわけだから、脱力すれば当然のごとく外側の出っ張り大転子が下へ(後ろへ)落ちます。つまり外旋してつま先は外へ向くのが自然です。

ガンダムやアシモの様に骨盤の下から真っ直ぐ脚が生えていたら何も起きずにつま先は天井を向くのかもしれませんが、そうじゃないってこと。

股関節は下じゃない

仰向けに寝てもつま先がまっすぐ天井を向いたままなら、それは股関節内旋の筋群が凝り固まって脱力できていない証拠です。はい、つま先が開いている方を何とかしようとしていた整体院の見解とは反対側に問題があるわけです。あー恐ろしや。

ちなみにうつ伏せに寝ると反対のことが起きます。

うつ伏せに寝たときの股関節

仰向けほどではありませんが、やっぱり宙に浮いている大転子が下に(前に)落とされて股関節は内旋をし、つま先は内側を向くことになります。うつ伏せでつま先を内向きにした時どこか窮屈な感じがするなら、股関節の外旋筋が凝り固まってる証拠です。

いやーしかし我ながら親切なブログだなぁ。下手な整体学校行くよりこのブログ読んでた方が勉強になるね!

まとめ。つま先の向きと骨盤はあまり関係ありません

骨盤矯正という言葉がメジャーになってみんなが気にするようになった【骨盤】。非常にキャッチーなワードとして定着しましたが、把握しているならともかく教わった事をそのまま信じ込んで考えもせずに横流ししている整体師・セラピストは意外なほど多いのであります。

何度でも言いますが、骨盤は歪まないし極一部の出産を除いて開くこともありません。

動くのは関節であって骨盤ではありませんし、関節を動かしているのは骨じゃなく筋肉です。身体はひとつのユニットとして機能していますからその部分だけでバッチリ整えられるわけではありませんが、直接的につま先の向きを変えられるのは、【膝関節をまたぐ筋肉】か【股関節をまたぐ筋肉】なのであります。あ、ちなみに仰向けで寝た時つま先が伸び切って下方を向き過ぎちゃう人はフクラハギがコリコリです。ほうっておくと足攣りますよw

仰向けに寝た時、足は(つま先)は開く(外を向く)のが物理。骨盤が開いてるなんて大ウソ、むしろつま先が内を向いている方が問題です

股関節は骨盤と大腿骨で構成されるので骨盤との関係がまったくないわけではありませんが、はなんちゃって整体院に無駄なお金をかけていると骨盤じゃなくてお尻がだらしなく広がって垂れてしまうかもしれませんよ!

うつ伏せ以外でのつま先内向きは百害あって一利なし。内股を撲滅すべく、総まとめ的なエントリ書きました↓

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書いている人

パンチ伊藤
あっとう言う間に整体師歴19年。現役で施術する傍ら小さな整体塾を主宰しています。当たり前な解剖生理と簡単な物理を繋いだわかりやすい身体の話が得意。釣り/山/島/音楽/映画/生きもの/が好き。2020年から自然農の畑やってます。

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