『痛みが出ないように身体を使うと疲れる』そんな塾生がいたのでみんなで考えました。
カカトが接地して足の裏全体で身体を支える完全二足歩行の私達は、骨を重ねるイメージで上手に立てばほぼ脱力して立っていられます。逆に言えば、良い姿勢で立つと身体中ほぼ全ての筋肉を少しずつ使うという事でもあります。不安定にユラユラ揺れる骨格をあちこちの筋肉で少しずつ補正して立つのが理想なのです。
伸筋群(関節を伸ばす筋群)は抗重力筋とも呼ばれます。確かにただ立つだけなら伸筋群だけでも立てますが、伸筋群に負担が集中する事になります。いわゆる悪い姿勢で背中や腰が痛みだすのはその為です。
わかっちゃいるけど悪い姿勢になってしまうのは“楽”だからです。悪い姿勢になればなるほど使う筋肉の種類が減っていくので『悪い姿勢=楽』という感覚は間違っていません。良い姿勢が何か疲れるのも正解。筋肉の種類が増えますからね。
『楽と疲れ』は代謝の『低い・高い』に置き換えられます。
全身400ほどある骨格筋を総動員して良い姿勢で立つと疲れる。同じ“立つ”という行為を半分以下の筋肉で行なう悪い姿勢は楽に感じる。冷静に考えれば当たり前の生理です。しかしここに心理が入り込みます。疲れるとやがて痛みに襲われそうな気がするのです。
冷静になりましょう。疲れは沢山の筋肉を使って代謝が上がっている証拠であってけして痛みの前兆ではありません。痛みは偏りのサイン。限られた筋肉への集中した負担が痛みの元です。(肉体的な事だけに特化してお伝えしています)
階段で試してみましょう。
カカトが設置する数少ない哺乳類の私達ですが、普段何気なく階段を利用する時は多くの方がつま先で上り下りしていると思います。その方が“楽”だから。ぜひ今度階段を使うときはしっかりカカトを接地してみてください。ええ、きっとその方が疲れます。どっちが良いかわからない人はもう1度この文章を読んでご自分で決めてください。痛みが出ても疲れないほうが良いのか、多少疲れても痛く成らないほうが良いのか。選ぶのは自分です。
伊藤としてはどっちも出来るんだからどっちもやった方が良いんじゃないかと思います。違いをわかった上で臨機応変に。
痛みは疲れの延長ではありませんが、疲れの中には良いやつと悪いやつがあります。注意。
ちなみに良い姿勢とは“直立不動”ではありません。身体も元々は不安定に動き続ける『自然』ですから、固定・安定を求めては上手くありません。揺れない竹はすぐ折れます。出来る限り脱力して揺れる。揺れを補うために沢山の筋肉を少しずつ動員して疲れる。なんだかちょっと矛盾しているようですが、白黒ハッキリしないのも自然の摂理じゃないでしょうか。自然とは結構理不尽なものです。