『登山は上りよりも下りの方がキツイ』
自ら経験していなくても聞いたことはあると思います。別にコレ登山に限ったことではなく、普通の階段でも下りで膝の痛みを訴える人の方が多いのです。関節は関係ありません。筋肉にとって下りのほうが負荷が大きいからです。

『上りはカカトで』
これも登山する人ならわりと常識レベルの知識。つま先しか引っかからないようなクライミングはさておき、石段や坂道はカカトで刈るようにして登るのが良いとされています。

階段や登山の下りで膝が痛みやすいワケ

『スクワットの正しいやり方』とか『カカトを押し出すようにすると大腿四頭筋がパワフルになる』とか『抗重力筋』などの言葉も、知識として知っている人は多いと思いますが、きちんと生理に則って『何故か?』を理解できている人は、整体師・セラピストでも多くないと思います。まぁ何故かわからなくてもお客さん・患者さんが喜んでいればそれで良いのでね、ぶっちゃけ。

んが、他人様の身体に触るなら『何故か』知っておきたいのが手力整体。理由なく触ることは許されないのです。

階段も登山も上りは短縮性、下りは伸張性の収縮を生じます

伸長性収縮

筋肉が収縮しつつも(力を入れつつも)伸ばされる状態。持ち上げたダンベルをゆっくり下ろす時の上腕二頭筋など。筋肉空回り状態につき負荷大。

短縮性収縮

筋肉が収縮しつつ縮まっていく状態。ダンベルを持ち上げる時の上腕二頭筋など。筋肉にとって当たり前な状態につき負荷少。

【伸張性収縮】と【等尺性収縮】筋肉痛が出やすい運動と即効解消法

近頃の教室はちょっとした筋肉痛ブームです。『自分の身体はタダで使えてクレームも出ない最高の教材。』そんなマインドが塾生達にも浸透してきているようで嬉しいかぎり…

三世代家庭に育ったせいかお年寄りと仲良くなれてしまうワタクシ、70、80代のお客様も多く、お陰様で歳を重ねて生じてくる共通の変化を目の当たりにしております。遅かれ早かれの個人差はあるものの、皆さん共通して伸張性収縮に耐えられなくなる。伸長性の方が筋肉にとって負荷が強いのだから当然です。

んが、若い頃はコレがわからない、感じない。『上れても下りられなくなる』『自転車には乗れても歩けなくなる』『立ち上がれても座れなくなる』と言われてもピンと来ないはず。がしかし、加齢による筋力低下で伸張性収縮に耐えられなくなるのは、遅かれ早かれ共通して皆にやってくる事実です。

階段や山などの上りは、膝の伸筋である大腿四頭筋が短縮性収縮。反対に下りでは、カクンッと膝が折れないように(屈曲しないように)、大腿四頭筋が力を発揮しつつ伸長性収縮。これだけでも、階段や登山の下りで膝が痛む要因として十分といえば十分。

抗重力筋

整体師・セラピストなら多くの方が知っているであろう抗重力筋。重力に対抗して二足直立する時に使う筋肉の総称ですが、その分け方には諸説あって統一されていないのが現状です。

「不安定に揺れながら全身の筋を少しずつ使う」のが二足直立時の理想ではありますが、良いか悪いかは別として単純に『二足で立つ』だけなら伸筋群だけで立てるので、わざわざ『抗重力筋』に分類するなら『伸筋群』が正解だと思います。

ふくらはぎ(下腿三頭筋)を抗重力筋に分類する記述を見かけますけれど、踵(カカト)を接地させるのが二足直立のアイデンティティー。なのでフクラハギで立つのは間違いです。

人はいかにして直立二足を手に入れたか(半分妄想)

人はいかにして二足直立を手に入れたか。直立する時の大切な要素を知っておくと『健康』のために必要なケアが見えてきます。最重要は殿筋群と腸腰筋。その他は?

理想の抗重力筋
理想は全身の筋をちょっとずつ全部使う
抗重力筋
あえて抗重力筋を分類するなら下肢と体幹の伸筋群=抗重力筋。

伸筋群が力を出す。いつも重力対して頑張っているはずの伸筋群ですが、まるで筋肉に寿命があるか如く加齢と共に弱り使えなくなっていきます。

かなり歳をとっても『守りの動作』を作る屈筋群には力が入ります。んが、力を出す言わば『戦う動作』の伸筋群は動かせなくなくなっていきます。立場や体力に合わせて理にかなった自然の摂理と言えるかもしれません。
近頃は若い内から守りを固めてる人が多過ぎるような気もしますね。みんな屈筋に力入れ過ぎです。

霊長類最強女子も強さの秘訣は伸筋群なのですよ。

守るのは弱ってからで良いです。伸筋を使いカカトで地面を攻めましょう。

ちなみに足の骨はこんな構造です。

足の骨

多分皆さんが思っているよりも踵の骨って後ろへ出っ張っているのです。で、筋肉はこんな感じ。

足の骨と筋

通常足関節の動作は底屈・背屈と呼びますがあえて屈曲・伸展で考えると、前の方青系が伸筋群、後ろの赤系が屈筋群です。

膝を伸ばすための連動

筋肉を単体で使うのではなく生理的に連動させて動作していく場合、カテゴリを同じくする筋を一緒に使うことがキーになります。

スクワットや階段の昇り降りのように、身体を上下に動かす(運ぶ)のは大腿四頭筋がメイン。同様に伸筋カテゴリにあるスネの筋(前脛骨筋長趾伸筋など)を収縮させてカカトで地面を押すと四頭筋がパワフルに使えます。

スネと四頭筋を連動させてパワウルに

もし反対に、ふくらはぎ側の筋に力が入ってしまうと、上記イラストにある1番外側の赤い矢印、腓腹筋も収縮します。困ったことにこの筋は膝の屈筋でもあります。
つま先で階段や山道の昇り降りすると、膝を曲げる筋と膝を伸ばす筋の双方同時に収縮して引っ張り合うことになります。
(ハイヒールで膝がしっかり伸びにくいのも同様の理由ですね。ふくらはぎのインナーマッスルを使えれば良いのですが・・・)

つま先で歩くと壊れやすい

本当のぎっくり腰が起きる時と同じ現象が膝で起きる。壊れるのにもちゃんと理由があるのです。

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つま先に体重が掛かると危ない!

屈筋と伸筋を同時に収縮させる危ない前かがみ

こんな風に前かがみなると、支点と重心がずれてモーメントが強力になるのも然ることながら、つま先に体重が掛かってしまい屈筋(赤)と伸筋(青)が同時に収縮するのでとても危険です。

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しっかりカカトに体重を掛けるようにすると、伸筋群という同一カテゴリが収縮してしっかり力が出せます。

なのですが・・・・問題は階段や山道の下り。前に出す脚はともかく、後ろの脚が如何ともしがたく、どうしてもこの組み合わせになってしまいます。

階段・山道の下りで膝が痛むワケ

膝がつま先より前に出る、ダメなスクワットと同じ状態。下りはやっぱり膝が痛みやすいワケです。

なので下りはひときわ歩幅を小さくする!
歩幅を小さくして・・・

  • 早めに前の足へ体重をかける
  • 後ろのフクラハギになるべく力が入らないようにする(カカトを地面に付けておく)
  • あ、あと膝は外側に向けない!(コレはまたそのうち)

四頭筋などに掛かる伸張性収縮は避けられませんが、屈筋・伸筋の引っ張り合いを避けられれば、突如強い痛みに襲われずに済みます。踵をしっかり残せるようにフクラハギのストレッチを念入りにしておきましょう。

もうひとつ、とっておきの裏技がこちら↓

後ろ向きで坂や階段を降ると膝を痛めずに済みます

斜面がキツくなれば当然皆さん後ろ向きになると思いますが、そこまでキツくない斜面でも後ろ向きに下ると膝への負担が大幅に減らせます。正しいスクワットと同様、臀筋群が効率良く動くからです。

スクワットの正しいやり方は何故正しいか

スクワットの正しいやり方として『膝小僧が爪先より前に出ないように』とは良く言われますが“何故”そうなのか知っている人は少ないと思います。答えはココにあります!

大きな駅なら階段を後ろ向きで降りるお婆ちゃんを見るのはそんなに珍しくありません。一見不自然に見えますけれど、後ろ向きで階段を下りる方が正しい身体の使い方とも言えるのです。
若いうちはあんまりピンとこない人が多いでしょうが、是非ちょっとキツイ山でも登って下りで体験してください。

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