パンチ伊藤です。私が主宰する手力整体塾の教室で「靴下がカカトから擦り切れる」という人がいたので歩き方について改めて話し合ったことをシェアしておきます。「親指で地面を蹴る」は間違い?!歩き方論争にとどめを刺す内容ですよ!
「拇指(おやゆび)で蹴る」のは間違い?!歩き方の事実【蹠行】
重力が存在する地球上において物理的に無理のない姿勢というのは存在しますが、いつでもどこでもその姿勢でいられるわけではないので、普遍的に正しい姿勢というものは存在しません。
その時その場所で最良の姿勢になれてこそ【整体】であって、直立したときの姿勢だけ理想に近づけても【整体】には程遠い。
同じように『歩き方』にかんしても普遍的に正しいものはありません。
アスファルトで覆われた平らな道をただ真っ直ぐ前に向かって歩くだけなら正解があるのかも知れませんが、階段も凸凹も横にも後ろにも歩けるのが人間。姿勢と同様にその時その場所で最良と思われる歩き方へ自然にシフトできてこそ【整体】であるといえます。
だから、「自分の歩き方がなんかおかしい」そうやって気づくのは良いことだと思いますけど、正解を求めて検索に明け暮れても無駄なので。
「歩けば歩くほど何処か痛くなる」「靴底が偏って磨り減る」「どうにも歩き方がわからない」。そんな風に思ったら、強制的に色んな歩き方をさせられる山道へ分け入りましょう。非常事態宣言も解除されましたから、圏内のお山なら自粛警察にヤイヤイ言われることもありませんからね。
歩くほどに靴下のカカトが擦り切れる
靴下もストッキングもいつも決まってカカトらか擦り切れてくるのは、前に出している足の着き方に癖があると思っていた塾生がいましたが、カカトが擦れるシチュエーションを冷静に見直してみれば、後ろに押し出す足に原因があるのがわかります。
ワタクシ自身も、ちょっと大き目で足首やソールの部分が固く動きが阻害される防寒ブーツを履くとカカトが擦り切れることがあります。スレに弱いウールの靴下だとてきめんです。
靴の中でカカトがパカパカ動いて靴下が擦れる。靴が原因な場合もあるわけですが、後ろ足のカカトが地面から離れるのがそもそも早過ぎると、余程フィットした靴でなければ靴下は踵から擦り切れるでしょう。
踵が擦り切れる人だけじゃなく、靴の中で靴下脱げちゃう人も同様です。
あ、靴下のカカトを守りたいのであれば、逆にずっとつま先だけで歩いても守れます。靴の中で足が暴れなければ良いわけですからね。
歩く=重心の移動
お悩みの方が多いので、歩行に関するブログは過去にも色々と書いています。
歩き方にかんする情報は実に沢山溢れていますが、唯一明確なことは【歩く=重心の移動】であるという事。そして重心を動かすのはいつも決まって伸筋群の役目だと言うことです。
例えばスクワット
重心を上下に動かすのは上げる時も下げる時も伸筋群が収縮します。
スクワットに限らず、階段でも坂道でも椅子に座る時でも立ち上がる時でも全て伸筋群で重心を動かすのです。
【歩く】【走る】も同様、重心を動かすのは伸筋群の役割になります。
後ろ向きに歩いたり懸垂したりすると屈筋群でも重心を動かせますが、通常は【抗重力筋】にあたる伸筋群が重心を動かすと理解しておけば良いでしょう。
「歩くときは拇指で地面を蹴る」という情報がとても目立つ世の中ですけれど、その情報ばかりに偏ると屈筋群で歩くことになります。カカトは早々に地面から離れ靴下は擦り切れ、股関節の可動が減った分たくさん動く膝を痛めやすくなります。
A.しっかり最後までカカトで地面を押して歩くと膝関節も股関節もしっかり伸展する。胸腰部からはじまっている脚を感じることもできる。
B.拇指で地面を蹴ることだけ考えるとカカトが早々に地面から離れ膝も曲がる。股関節を伸展しなくても歩けてしまう。
Aが伸筋歩きで、Bは屈筋歩きともいえます。屈筋歩きだと当然屈筋優位な身体になります。加齢と共にどこもかしこも伸ばせなくなる要因のひとつでしょう。
母趾で地面を蹴るのは本当に最後の最後。重心を移動するためではなく脚そのものを前に運ぶための動作です。母趾で蹴る(底屈)とほとんど同時に膝関節が曲がり、一瞬遅れて股関節が曲がりだします。底屈は膝を曲げるためのスイッチ。伸筋群のスイッチを切るスイッチとも言えます。
歩行時の下肢連動
★.→カカトで地面を押す→膝伸展→股関節伸展→
☆.→母趾で蹴る(底屈)→膝屈曲→股関節屈曲→
便宜上矢印を付けましたがほとんど同時に起こる動作です。
★と☆を繰り返しながら重心を前に運んでいくことが【歩く】という行為なのであります。
屈筋は伸筋群を効果的に使うために存在していると思いましょう。
人間は蹠行動物です
陸上で生活する哺乳類はその歩き方から【蹠行・趾行・蹄行】と分類され、踵を接地して歩く我々は蹠行動物に当たります。
何故我々人間が蹠行を選んだのか?趾行・蹄行との違いはなんなのかなどは↑を読んでもらうとして割愛しますが、【人間は蹠行してください】と取説に記載されているわけで、しっかり蹠行していないと人としてのパフォーマンスが下がってアチコチ壊れやすくなるということは容易に想像が付くと思います。
なるべくカカトを地面から離さずに歩くことは、かの甲野善紀先生も「互の目歩き」という名称で提唱されています。
なるほど、こうやって歩けばカカトを地面に密着させて歩けます。
とても急な下り坂や高い段差から降りる時は、皆無意識に横を向いたり後ろを向いたりすると思いますが、「カカトを地面につけておきたい」という本能が働くのでしょう。究極の状態なら誰でも体の声が聴こえるんですね。
ちなみに、つま先が少しでも内側を向いていると、股関節も足関節も可動域に制限が掛かるので、カカトは尚更早くに地面を離れます。しっかりとした蹠行するならつま先は外です。
まとめ
外反母趾、内反小趾、膝痛、O脚、X脚、股関節痛・・・e.t.c.
下肢に現れる不都合のほとんどが【人間は蹠行です】という取説を無視した結果だと思います。
靴底の片減りや靴下のカカト擦り切れなども同様、取説を守っていたら防げるはずです。
大切なのでもう一度。【人間は蹠行動物】です。
めちゃくちゃ底屈したままになるハイヒールでも美しく歩ける人はいますが、飽くなき【美】への欲望がなせる技だということを忘れずに。
下から2本の肋骨を取り除いてコルセットはめたり内股にして弱々しさを演じてみたり無謀なダイエットに励んでみたり・・・【美と健康】を天秤に掛けている女性は結構多いんじゃないでしょうか。
私のようなオジサンは【健康だったら美しい】と思うんですがね。
蹠行について新たな気付きがあったので改めてまとめました↓
【生き方を】そのまま【働き方】に
『遊ぶように学び、遊ぶように働く』。素のままの自分で誰かの役に立つと「生き方」はそのまま「働き方」になる。
「頑張る」より「愉しむ」。遊びが全てを救う。そんなモットーを掲げる手力整体塾@からだ応援団です。